会長就任に際して 伊藤仁 新会長

 

 

 

 

ステンレス協会 会長
伊藤 仁
(新日鐵住金ステンレス株式会社 代表取締役社長)

 

 この度、ステンレス協会の第75回定時総会におきまして、会長に就任いたしましたので一言ご挨拶を申し上げます。 
  昨今の世界経済は、地政学的なリスクや経済のけん引役の不在など、不透明な部分を残しながらも、総じて堅調に推移しており、また日本経済も、雇用環境の改善による消費の持ち直しや企業収益の拡大により、ゆるやかな回復が続いています。 かかる環境の下、わが国のステンレス鋼需要も、オリンピック・パラリンピックに係る建設関連需要や自動車・産業機械等をはじめとした製造業向けの旺盛な需要に支えられ、好調に推移しています。
  一方で、わが国ステンレス産業を取り巻く環境が楽観を許さないということもまた事実です。中国を始めとする新興国における需要の伸びを上回る能力増強投資は、世界的な過剰能力問題を深刻化させ、これを踏まえた米国・欧州・ASEAN等の国・地域における保護主義化の動きは市場の歪みを助長し、わが国ステンレス鋼市場においても、輸入製品の増加による市場の健全性への影響が懸念されています。また中長期的には、次世代自動車技術や高度IT化等の社会・産業構造の変化により、新規需要創出の期待と既存需要縮減の懸念が想定されるなど、メガトレンドの見極めも重要です。
  ステンレス鋼は、その耐食性や耐熱性、強度、意匠性、リサイクル性の高さなどの点で非常に優れた基礎素材であり、我々はステンレス鋼という基礎素材を通じて社会を支えるという重要な役割を担っています。またステンレス産業は裾野の広い産業であり、地域に密着した製造、流通、加工に係る多くの「ものづくり」の現場が存在します。その現場が、日々の営みの中の創意工夫を通じ、より良い製品を生み出す努力を続けることが日本の製造業の強み、即ち「現場力」であり、この現場力という強みは、地域の経済・雇用にも貢献しています。
 そして、今、我々日本のステンレス産業が目指すべきは、我々が有する世界最高水準の技術とものづくりの力を強め、今まで以上にグローバルな視点で需要を捉え、ステンレス鋼を通じて豊かな社会を支えるという役割を、グローバルに担っていくということです。
 ステンレス協会は、昭和34年(1959年)に設立され、その半世紀を越える歴史の中で、ステンレス鋼の市場開発活動や調査統計事業、標準化事業などの取り組みを通じて、ステンレス産業の発展に貢献して参りました。これらの取り組みは、今後も充実させていく必要があります。さらには、わが国のステンレス産業を取り巻く国際環境が大きな転換点に直面しているところ、国際ステンレス鋼フォーラム(ISSF)などを通じて国際的な動向を把握し、わが国ステンレス産業に係る問題には迅速に対処するとともに、世界のステンレス産業の健全な発展に資する発信に努めていく必要があると考えています。
 最後になりますが、会員各社の格別のご指導とご支援をお願いし、会長就任のご挨拶とさせていただきます。

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