年頭所感

ステンレス協会会長


(新日鐵住金ステンレス株式会社
 代表取締役社)

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年を振り返り、まず、第一に挙げなければならないのは、3月11日に発生した東日本大震災であります。M9の巨大地震は近年に例が無い程の甚大な被害をもたらしました。被災者の皆様には、改めて、心からのお見舞いを申し上げます。

震災は、サプライチェーンの寸断、電力供給の制約等を通じ、被災地以外を含め、広く影響を及ぼしました。その後、各位の並々ならぬご努力により、被災からの回復は急速に進んでおりますが、ステンレス業界としては、引き続き、最優先且つ安定的な材料の供給に努め、復興・復旧を支えていく所存であります。

昨年春以降、世界経済は、新興国の金融引締政策等により、成長速度が鈍化、足下ではギリシャ問題、欧州他国への債務危機の波及等から、リーマン危機以来の景況悪化懸念が拭えない状況にあります。日本経済は震災後の生産・消費の急回復が一巡する中で、超円高による輸出競争力の低下、更には、世界経済の失速等に直面し、再び停滞感を強めております。

かかる状況下、ステンレス業界も、内需低迷に加え、超円高下、従前にも増して厳しい国際競争下に曝されていることを痛感せざるを得ない1年でありました。

本年、ステンレス業界としては、こうした厳しさを次なる飛躍へのチャンスに変えるべく、以下の観点を軸足に取り組んでいくべきと考えています。

まず第一に、技術先進性を活かした商品力、品質競争力に一層磨きをかけることであります。ステンレスの内需は建築向の減少及び電機・自動車等の海外移転の加速等から当面、低迷が続くと考えざるを得ません。一方、世界のステンレス需要は過去30年間、年率6%で伸長、世界の経済成長を上回っております。特に、中国をはじめ、東南アジアの成長は著しく、こうした世界のステンレス需要を捕捉することが重要であります。残念ながら、汎用品においては、現下の為替レート、環境コストをはじめとする諸条件の差等から、国際競争力を喪失しつつあります。一方、日本のステンレスメーカーは汎用品以外の独自商品を持ち、高い品質競争力を有しております。こうした長所を最大限に活かし、更には、素材の製造から最終用途に即応した加工・研磨・仕上、最終製品への適用技術まで含めた、一貫での「モノ作り」の実力に一層磨きをかけることによって、国内需要家業界と共に国際競争力を維持・向上させ、東南アジアを中心とした伸びゆくステンレス需要を捕捉していくべきと考えます。

また、ステンレスの製造コストの相当部分を占める原料価格が高止まりし、時には乱高下する中において、寧ろ、それをチャンスとして活かすこと、即ち、各社が高い技術力を活かし、省ニッケル鋼、省クロム鋼等の開発に最大限努力し、製造コスト、価格変動幅を抑制することによって、内需の喚起、引いては、円高で喪失しつつある国際競争力の回復を成し遂げることが重要であります。

ステンレスは、高耐食性、長寿命、リサイクル性、美観等、長所が非常に多い素材であります。また、世界的にエネルギー開発が活性化する中で、より厳しい環境下での用途が広がれば、ステンレスの需要は一層増大し、また、人類の生活が高度化すれば、ステンレスの消費に繋がります。ステンレスならではの特色を活かした需要を積極的に開拓し、ステンレス全体の需要の裾野を広げ、ステンレスを使って良かった、と言って戴けるお客様を増やすことは協会の使命と考えております。会員各社及び需要家の皆様のご協力を賜りつつ、活動していく所存ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。

最後になりますが、本年が皆様にとって、幸多き1年となりますよう、祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて戴きます。

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