ステンレスと耐熱鋼の違いについて

JISG0203「鉄鋼用語(製品及び品質)」では、以下のように定義されています。

ステンレス鋼=SUS(Steel Use Stainless)

耐食性を向上させる目的で、クロム又はクロムとニッケルを含有させた合金鋼。
一般にはクロムの含有量が約10.5%以上の鋼をステンレス鋼といい、主としてその組織によって、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系及び析出硬化系の五つに分類されます。

耐熱鋼=SUH(Steel Use Heat Resisting)

高温における各種環境で耐酸化性、耐高温腐食性又は高温強度を保持する合金鋼。
数%以上のクロムのほか、ニッケル、コバルト、タングステンその他の合金元素を含むことが多く、主としてその組織によって、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系、及び析出硬化系の四つに分類されます。なお、合金元素の総量が約50%を超える場合、一般に超耐熱合金又は耐熱合金もしくは単に超合金と呼ばれます。

定義に示されているように、ステンレス鋼は常温における様々な環境下での耐食性を高めることを主目的としていますが、鋼の耐食性を高める主元素であるクロムは高温における耐酸化性を高める元素でもあります。
また、クロム以外の耐食性を高める元素にはニッケル、モリブデン、ニオブ等がありますが、これらの元素は高温強度を高める元素でもあります。

このようにステンレス鋼に含まれる耐食性を高める元素は、一方では耐熱性をも高める元素でもあります。
即ちステンレス鋼は耐熱鋼でもあると言っても過言ではありません。

表1にはJISで規定された耐熱鋼の種類を示しますが、耐熱鋼(SUH)の他にステンレス鋼(SUS)も含まれています。
用途的にステンレス鋼は耐食性、成形性、溶接性を重視されることが多いため、比較的低炭素の種類が多いのですが、耐熱鋼の場合、耐熱特性を高めるため炭素量が高く、その向上元素の添加量はステンレス鋼に比べ多くなっていたり、追加されていたりするという特徴があります。

・耐酸化性向上 : クロムやシリコンの増量
・高温強度向上 : 炭素、タングステン、バナジウム、コバルト等の増量又は添加

表1 JISG3411耐熱棒鋼、JISG4312耐熱鋼板に採用されている耐熱鋼とステンレス鋼の種類

種類の記号 分類 種類の記号 分類
SUH31 オーステナイト系 SUS302B オーステナイト系
SUH35   SUS304  
SUH36   SUS309S  
SUH37   SUS310S  
SUH38   SUS316  
SUH309   SUS316Ti  
SUH310   SUS317  
SUH330   SUS321  
SUH660   SUS347  
SUH661   SUSXM15J1  
SUH21 フェライト系 SUS405 フェライト系
SUH409   SUS405  
SUH409L   SUS430  
SUH446   SUS430J1L  
SUH1 マルテンサイト系 SUS436J1L  
SUH3   SUS403 マルテンサイト系
SUH4   SUS410  
SUH11   SUS410J1  
SUH600   SUS431  
SUH616   SUS630 析出硬化系
        SUS631  
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