ステンレスと異種金属との接触についての問題点

「イオン化傾向」という言葉をご存知でしょうか?

「イオン化傾向」とは、水の中で単金属が金属結合から金属イオンとして出やすい順に並べたものです。学校の理科の授業で覚えた記憶がありませんか?

「貸(K)そうか(Ca)な(Na)、ま(Mg)あ(Al)当(Zn)て(Fe)に(Ni)す(Sn)な(Pb)。ひ(H)ど(Cu)す(Hg)ぎ(Ag)る借(Pt)金(Au)」

これはイオンになりやすい順に並べて、覚えやすくしたものでしたね。
特に水素(H)よりもイオン化傾向が下(イオンになりやすい)の金属は、空気中でも水分がありますからイオン化して、空気中の酸素などと結びついて酸化物を作ろうとする金属です。これらを卑金属と言います。逆に金(Au)や銀(Ag)などは貴な金属、「貴金属」と呼ばれることは有名です。卑(いや)な金属は単体でもイオン化しようとしますが、イオン化の違う金属を接触させると、イオン化の下位の金属はイオン化が促進されます。

突然ですが、電池には1.5V(ボルト)とか書いてありますね。これを電位差と言うのですが、金属は水素を基準にすると、それぞれが固有の電位を持っています。「イオン化傾向」はこの電位の低い順に並べたものと言い換えることが出来ます。電位が大きく離れている金属同士が電解質中(電気が流れやすい状況)で接触すると、卑(いや)な金属の方のイオン化がますます促進されます。この現象を「異種金属接触腐食」と言います。

「異種金属接触腐食」をもう少し電気化学的に追加説明しますと、電位の違う二つの金属が電解質中で接触すると、卑な金属がアノードとなってイオン化(腐食)が助長され、貴な金属の方はカソードとなってイオン化が抑制されます。アノード側で助長される腐食を「異種金属接触腐食」と言い、その時カソード側では腐食が抑制されていて、これを「カソード防食」と言います。

さて、ステンレスに関する話をしますと、例えば、ステンレスの流し台の上に鉄くぎを置いて、水道水で濡らして一晩でも置いておくと、あくる日にはくぎの形に沿った「赤さび」が流し台の上に出来ていることがあります(防錆処理されたくぎはなかなか出来ない事があります)。

ステンレスは合金ですから、イオン化列には見当たりませんが、イオン化列に当てはめますと銅(Cu)と同じくらいです。つまりこの場合は鉄くぎが卑な金属、ステンレスが貴な金属で、鉄くぎの方のイオン化(腐食)が促進されたことになります。他にアルミニウムとステンレスの関係、例えばアルミリベットでステンレス建材を固定したりすると、風雨に曝されているうちに、アルミリベットの腐食が促進され、固定に必要な強度が保てなくなったりします。

どうしても異種金属を接触させる必要がある場合は、直接接触しないように、つまり「絶縁」させておくことをお勧めします。更に「絶縁」させる事も難しい場合は、「異種金属接触腐食」に影響する因子で調整する事があります。

「異種金属接触腐食」に影響する因子は、今まで述べている金属が持つ電位の違いがあり、その他に、接触する金属の面積比、液の電導度、溶存酸素の量、液の流れの速さ、温度、pHなどがあります。これらは、ステンレス協会編の「ステンレス鋼便覧」などに詳しく記載されていますので参考にして下さい。

「なお、鋼種が異なるステンレス鋼の場合については、鋼種が異なっても自然電位がほぼ同一のため特に問題はありません。」

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