年頭所感

 

ステンレス協会 会長
久保田 尚志
(日本冶金工業株式会社 
代表取締役社長)

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症の位置づけも5月には季節性インフルエンザと同じ5類に移行し、外出自粛などの制限を前提とした生活様式からようやくコロナ禍前の日常を取り戻した1年でありました。
我が国経済の面では入国制限の緩和をきっかけに、インバウンド需要の急速な回復や、サービス消費関連の需要回復なども見られました。折からの物価高で個人消費の面では逆風が吹いているものの、概ね良好な経済環境にあったと言えるのではないでしょうか。
一方で世界に目を転じますと、長期化するロシアのウクライナ侵攻は解決の糸口が見出せず、10月にはイスラエル・ハマス紛争が勃発し、中東情勢を急速に不透明なものにするなど、多くの地政学的リスクが顕在化しています。又、欧米での金融引き締めによるインフレ抑制策をはじめ、米中摩擦の問題、中国国内での不動産関連の不良債権問題など、世界的な経済環境に対する不安要素も有り、引き続き国際情勢や世界経済動向に留意が必要な状況にあります。

我が国のステンレス業界は、主に半導体製造装置関連の回復遅れや自動車生産台数の低迷などもあり、調整局面が継続した1年でありました。しかしながら、カーボンニュートラル関連を主体とした設備投資案件などでは、より具体的な引合い・照会なども確実に増加傾向にあります。これはステンレス鋼の持つ耐食性、加工性、リサイクル性、強度など優れた特性が新時代の社会にも必要とされている証であり旺盛な需要を大いに期待できるものと確信しております。又、ここ数年の国内ステンレス鋼マーケットにおいては、海外材の存在感も増している状況にありますが、今こそ日本製ステンレス鋼の品質安定性を武器とし、アフターケアやきめ細かなデリバリーなど質の高いサービスをタイムリーに提供し、優位性をより高めていくことが何より肝要です。幸い我がステンレス業界には商社・流通・加工・メーカーの諸先輩方が苦心の末に構築してきた強靭なサプライチェーンが存在します。これらのインフラが大きな力を発揮することでしょう。

ステンレス協会と致しましてもこのような激動の時代に直面し、業界を取り巻くあらゆる課題に迅速に取り組み、我が国のステンレス産業の発展に資する活動を本年も推進して参る所存でございます。引き続き会員各社及び需要家の皆様のご指導、ご支援をお願い申し上げます。

最後になりますが、本年が皆様にとって幸多き一年となりますことを祈念し、ご挨拶とさせていただきます。

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