年頭所感

 

ステンレス協会 会長
伊藤 仁
(日鉄ステンレス株式会社 
代表取締役社長 )

 新年明けましておめでとうございます。
 皆様におかれましては、令和初の新春を、穏やかに迎えられたこととお慶び申し上げます。

   昨年は天皇陛下がご即位され、令和の時代が幕を開けた、歴史の大きな節目となる年でした。一方、全国各地では大きな自然災害が相次ぎました。被災地が一日も早く復興できますよう、ステンレス鋼産業といたしましても、できる限りの対応をさせていただきたいと存じます。

 今、改めて世界を見渡しますと、米中貿易摩擦の長期化、中東情勢や香港のデモといった 地政学的問題などの影響を受け、世界経済は成長の速度を落とし、国内経済も回復のテンポが鈍り始めているように見受けられます。
 更に長期的な視点に立てば、国内の人口減による内需の減少、世界的な自国産化と保護主義の流れの定着という産業構造と競争環境における大きな変化は避け難いものであり、正に私たちは歴史的な転換点を迎えております。

 このような状況においては、手をこまねいて環境の好転を待つのではなく、自らが変化の波を起こしていく必要があります。技術や社会の変化と共に、基礎素材としてのステンレス鋼に求められる役割は、拡大・多様化する可能性を秘めています。例えば、「第4次産業革命」の進展によるAI、IoTやロボット技術を活用した既存ビジネスモデルの変革や、本年から適用されるパリ協定がすすめる「脱炭素社会化」、自然災害に備える「国土強靭化」による防災・減災への取り組みなどでは、高耐食性、長寿命化、リサイクル性等、ステンレス鋼が誇る特長を生かした新たなビジネスチャンスとなることが期待されます。その実現に向け、私たちステンレス鋼産業は、商品開発や技術開発を着実に進めるとともに、社会やお客様のニーズの変化を捉えた、価値ある商品やサービスを遅滞なく提供していく所存です。

  私たちステンレス鋼産業を含む我が国の素材産業は、今日に至るまで日本の「ものづくり」を支えて参ったものと自負しております。この「ものづくり」の力こそ、我が国産業の基礎体力というべきものであり、私たちの「ものづくり」の力を強くすることは、企業、地域、延いては日本経済が持続的に成長していく上では不可欠なものであると信じております。昨年8月に60周年を迎えたステンレス協会は、ステンレス鋼産業が期待される役割を発揮する際に必要となる、様々な事業に取り組んで参りました。今後も、次の10年、さらにはその先の未来を見据えた事業に注力していく所存ですので、引き続き会員各社及び需要家の皆様のご理解、ご支援、ご鞭撻を賜りますれば幸甚です。

 結びにあたり、皆様にとりまして、本年が有意義で実りの多い年となりますことを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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