年頭所感

 

ステンレス協会 会長
井原 正規
(JFEスチール株式会社 
常務執行役員 )

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年は、新型コロナウィルスの感染拡大という歴史的な危機に直面しました。社会生活への影響は甚大で、それに伴い世界経済は急激かつ大幅な減速となりました。現在も未だその危機は予断を許さない状況です。日本経済は回復に向けて歩み出していますが、本格的な回復には時間を要するものと思われます。  

 さて、我が国のステンレス産業も同様に大きな影響を受けましたが、足元では急回復している自動車向けなど、一部の需要分野で徐々に復調の兆しが出ています。各分野が元に戻るまでは時間を要するものと想定されますが、今年は全般として回復基調に入るものと期待をしています。

 今、改めて世界を見渡しますと、米中貿易摩擦の長期化、中東情勢や香港のデモといった 地政学的問題などの影響を受け、世界経済は成長の速度を落とし、国内経済も回復のテンポが鈍り始めているように見受けられます。
 更に長期的な視点に立てば、国内の人口減による内需の減少、世界的な自国産化と保護主義の流れの定着という産業構造と競争環境における大きな変化は避け難いものであり、正に私たちは歴史的な転換点を迎えております。

 一方、世界の多くの国がコロナ後の成長戦略として脱炭素化、持続可能な社会インフラ構築に向けた動きを加速しています。今後、電動車の急速な進展や再生可能エネルギー・水素エネルギーへの転換が進み、ステンレスの需要構造も変化すると想定されます。こうした大きな転換期において、我々ステンレス産業も新たなニーズを見つけビジネスチャンスを積極的に創り出していくことが必要です。そのためには、長い時間をかけて培ってきた研究開発・製造技術に基づく日本のステンレスの長所、すなわち耐食性や耐熱性、強度、意匠性、リサイクル性、さらには安定した品質、多様な商品ラインナップを活かし、商社・流通・加工・メーカーすべての関係者で構築したきめ細やかで強力なサプライチェーンを駆使して、新たな用途開拓、商品開発、市場開拓を一丸となって押し進めることが重要と考えます。  

 ステンレス協会と致しましても、業界を取り巻く諸課題に取り組み、ステンレス産業の更なる発展、ひいては我が国経済の持続的成長に資する活動に今年も尽力していく所存でございます。引き続き会員各社及び需要家の皆様のご指導、ご支援をお願い申し上げます。  

 最後になりますが、本年が皆様にとって幸多き一年となりますことを祈念し、ご挨拶とさせていただきます。

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