2010年 年頭所感 会長 義村博

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
年頭にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。

昨年を顧みますと、米国では「チェンジ」を掲げ当選したオバマ大統領が誕生し、変革の年を予感させるスタートとなりましたが、一昨年にリーマン・ショックが引き起こした世界同時金融不安が世界経済に与えた打撃は大きく、米国ではかつてその繁栄の象徴として君臨したGMが事実上倒産する等、100年に一度の大不況を経験する事となりました。 日本経済におきましても、基幹産業である自動車産業で年初より未曾有の減産に追い込まれ、その影響は国内の全産業に及び、1-3月期のGDPは戦後最悪のマイナス成長を記録するに至りました。

2009年も後半に入り、漸く世界各国の緊急経済政策の効果が出始め、緩やかながら景気回復の兆しが見られるようになってまいりましたが、とりわけ中国では4兆元もの大型財政出動による景気回復策が奏功し、インフラ整備等を中心として内需の急速な盛り上がりを見せ、景気回復がもたつく欧米に代わり、インド等新興国と共に世界経済の牽引役を担うに至っております。また、日本経済でも中国等需要旺盛な新興国向け輸出の増加という外需に依存しながらも、徐々に景気回復の兆しが見え始め、また、内需もエコカー減税や家電向けエコポイント制度導入等の景気刺激策により、漸く自動車及び家電産業で生産回復が見られるようになってまいりました。しかしながら、景気の先行きについては不透明感が強く、 個人消費に力強さは見られず、 民間企業の設備投資が抑制される一方で、オバマ大統領と同じく「変革」を掲げて政権交代を果たした鳩山政権による事業仕分けの影響で、公共事業投資にも遅れが出る等、懸念材料が山積する状態であります。

こうした状況を背景に、ステンレス業界でも年初からかつて経験したことのない大幅な減産を余儀なくされておりましたが、漸く年後半より中国向けを中心とする輸出や生産が回復した自動車、家電向け等の需要に支えられ、ステンレス鋼でも生産が回復してまいりました。しかしながら、ニッケルをはじめとする原料価格の変動や円高継続による国内需要の海外流出や店売りにとっての需要の柱であります住宅及び建築関連産業の長引く不振等懸念材料は多く、予断を許さない状況が続いております。

しかしながら、わが国のステンレス産業には、過去より蓄積された技術力と世界最高水準の品質が有ります。 非常に厳しい経済環境に直面しておりますが、臨機応変に対応していく事は無論の事、こうした状況においても揺るがない強固な技術基盤を更に構築し、市場開拓を進めていく事が難局を乗り越える為に我々がしなければならない事と確信致しております。

今後、地球環境対策が益々重要さを増すに連れて、此れまでとは全く異なる需要が創出される事が予想され、そこには高度な技術的な対応が求められる事になると思われます。規模では、中国等の海外ミルには及びませんが、新しい需要への対応では、日本のステンレス業界ならではのチャンスが生まれて来る可能性が有ることを信じて止みません。

ステンレス協会は、ステンレス鋼の普及や需要の裾野を広げる為に、各委員会活動を通じて市場開拓や高品質の追求に欠かせない規格の整備等を地道に進めてまいりました。

また、昨年はステンレス協会創立50周年の年にあたり、諸情勢厳しき折りでは有りましたが、HPの拡充に着手し、一方では、ステンレス鋼の「イメージアップ キャッチフレーズ」を公募させて頂き、一般の方や学生の方からの分を含め、非常に多数の応募を頂きました。 ステンレス業界が、多数の方々のご支援を頂いております事をあらためて認識させて頂き、勇気付けられた次第であります。

本年も、大変厳しい年となる事が予想されますが、日本のステンレス業界が今風で言うならば「ガラパゴス的」にならず、健全に発展して行ける様、ステンレス協会会員各社及び需要家の皆様にお力添えを賜りながら、活動して行く所存ですので何卒宜しくお願い申上げます。

最後になりますが、本年が将来につながる明るい年となりますようにステンレス鋼業界並びに皆様のご発展とご健勝を祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

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